電気工事の1人工単価は、地域の相場や公表資料だけで決めるものではありません。自社が負担する年間人件費、工事へ充てられる稼働日数、工具・車両・事務所などの間接費、確保したい利益を順に整理し、案件ごとの施工条件を加味して決める必要があります。本記事では、1人工の意味と相場の見方、3種類の単価の違い、自社単価の計算方法、見積への反映方法、見直し時期を解説します。
結論|電気工事の1人工単価は相場だけでなく自社原価・間接費・利益から決める
電気工事の1人工単価を決めるときは、公共工事設計労務単価や協力会社の見積、自社の過去実績を参考にしながら、自社の実際の労務原価を計算します。そのうえで、1日当たりの間接経費と目標利益率を反映し、見積用人工単価を求めます。
相場は単価が大きく外れていないか確認するための材料です。公表単価や他社単価をそのまま採用すると、自社固有の保険料、非稼働日、管理費などを回収できず、受注しても利益が残らない可能性があります。算出に使った数値と適用時点を記録し、原価や工事条件の変化に合わせて見直せる状態にしておくことが重要です。
電気工事の1人工とは作業員1人が1日働く場合の単位
1人工は、作業員1人が1日作業する場合の作業量を表す見積上の単位です。ただし、1人工という表記だけで実際の労働時間、休憩時間、移動時間、作業範囲まで決まるわけではありません。見積では、何時間の作業を想定し、どこまでを単価に含めるかを明確にします。
公共工事設計労務単価は所定内8時間当たりで示される
公共工事設計労務単価は、都道府県・職種別に所定内労働時間8時間当たりで決定されます。一方、民間工事の「1人工」に全国一律の法定時間はありません。始業・終業、休憩、移動、準備、片付けの扱いは会社や契約条件で異なるため、見積書で想定時間と単価の対象範囲を明確にします。
半人工・時間単価は作業時間と現場条件をそろえて扱う
短時間作業を半人工や時間単価へ換算するときは、現場での作業時間だけでなく、移動、入退場、停電準備、資材搬入、片付けなどの拘束時間も確認します。4時間の作業だから必ず0.5人工になるとは限りません。最低稼働単位や短時間作業の基準を社内で定め、見積条件として示すことが必要です。
1人工単価に全国一律の金額はない
同じ電気工事でも、地域の賃金水準、担当する職種、資格や技能、工事の難易度、作業時間帯、移動距離によって必要な費用は変わります。全国一律の相場額を前提にせず、比較する資料の地域、職種、適用年月、費用範囲をそろえて確認します。
電気工事の1人工単価の相場を確認する方法
相場を確認するときは、1つの金額だけで判断せず、公表資料、協力会社の見積、自社の過去実績を照合します。各資料は目的と費用範囲が異なるため、同じ条件で比較できるかを先に確かめます。
公共工事設計労務単価を参考資料として確認する
国土交通省が公表する公共工事設計労務単価は、都道府県・職種別に公共工事の予定価格を積算するための単価です。令和8年3月適用分では、電工を含む職種別単価が示されています。地域差や改定傾向を把握する資料にはなりますが、民間工事で顧客へ提示する請求単価や、自社の見積用人工単価そのものではありません。
地域・協力会社の見積と自社の過去実績を比較する
実際の取引条件を確認するには、同じ地域で同種の工事を行う協力会社の見積や、自社の過去案件を比較します。工事内容、資格、作業時間帯、移動、材料・工具の負担、諸経費の計上方法が違えば、単価だけを並べても適切に比較できません。失注率や実際に残った粗利益も確認すると、設定単価の妥当性を判断しやすくなります。
公表単価や他社単価を自社の見積単価としてそのまま使わない
公表単価には含まれない費用があり、他社単価にはその会社独自の費用構造や取引条件が反映されています。そのまま転用すると、自社の法定福利費、車両費、管理費、非稼働時間などが不足する可能性があります。相場は比較基準として用い、最終的な単価は自社の数値から計算します。
公共工事設計労務単価・実際の労務原価・見積用人工単価の違い
人工単価を検討するときは、公表資料の単価、自社が実際に負担する原価、顧客へ提示する単価を分けて考えます。3種類を混同すると、原価不足や費用の二重計上につながります。
| 種類 | 目的 | 費用範囲・使い方 |
|---|---|---|
| 公共工事設計労務単価 | 公共工事の予定価格を積算するための基準 | 都道府県・職種別の所定内8時間当たり単価。地域差や改定傾向を確認する参考資料として使う |
| 実際の労務原価 | 作業員を雇用・稼働させる自社負担額を把握する | 給与・賞与・手当・会社負担の保険料などを年間稼働可能日数で割って求める |
| 見積用人工単価 | 労務原価・間接費・利益を回収する | 1日当たり労務原価へ間接費と利益を反映し、顧客向け見積に使う |
3種類を分けて整理したうえで、見積用人工単価に反映する費用と別途計上する費用を確認します。
公共工事設計労務単価の費用範囲は、次のように区別します。
| 区分 | 主な費用 |
|---|---|
| 含む費用 | 基本給相当額、基準内手当、臨時の給与、実物給与 |
| 含まない費用 | 時間外・休日・深夜の割増賃金、通常条件を超える手当、事業主負担の法定福利費、現場管理費、一般管理費 |
公表単価の適用年月と対象職種を確認し、含まれない費用を自社の見積へどのように反映するかを別途判断します。同じ費用を人工単価と諸経費へ重ねて計上しないようにしてください。
電気工事の1人工単価が変わる条件
基準となる人工単価を設定した後も、案件ごとの施工条件を確認します。通常の作業と追加負担が生じる作業を区分し、単価調整や別途費用の対象を見積書へ明記します。
| 変動条件 | 単価が変わる主な理由 | 見積での扱い |
|---|---|---|
| 地域・職種・資格・技能 | 賃金水準、人材需給、担当範囲、資格維持費、責任範囲が異なる | 役割・職種ごとに基準単価を分ける |
| 工事内容・施工環境 | 高所・狭所・高圧設備・停電作業では安全対策、準備、監視員、保護具が必要になる | 基本単価に含める範囲を定め、特殊条件は別途計上する |
| 時間帯・工期 | 夜間・休日・緊急対応・短工期では割増賃金や要員確保の負担が増える | 対象時間と割増方法を明記する |
| 移動・待機・搬入・人員構成 | 遠方移動、入場・停電待ち、資材搬入、有資格者と補助作業員の構成で拘束時間と原価が変わる | 移動費・待機費を分け、役割別の人工数で積算する |
条件による追加負担は、基本単価へ含める方法と別項目で計上する方法があります。通常条件の範囲、割増の対象時間、追加費用の算定方法を社内で定め、見積書へ明記してください。
電気工事の1人工単価に含める費用
自社単価を計算する前に、作業員を雇用し、工事を継続するために必要な費用を洗い出します。単価へ含める費用と見積書で別項目にする費用を決め、計上漏れと二重計上を防ぎます。
- 年間人件費:基本給、賞与、通勤手当・資格手当などの各種手当、会社負担の社会保険料・労働保険料を集計します。
- 1日当たり間接経費:工具、測定器、車両、燃料、事務所、通信、管理業務、教育、資格取得、安全用品、健康管理などの共通費を合理的な基準で配分します。
- 必要な利益:設備更新、採用、教育、予期しない損失へ備えるため、会社の目標に基づく利益率を設定します。
- 別途計上する費用:材料費や特定案件へ直接計上する現場経費など、見積書で別項目にする費用は人工単価から除外します。
職種や等級ごとに費用が異なる場合は標準モデルを分け、誰の単価を計算しているかを明確にします。
自社の見積用人工単価を計算する3つの手順
自社単価は、労務原価、必要原価、見積用人工単価の順に計算します。各段階の数値を残すことで、どの費用が単価へ影響したかを説明しやすくなります。

| 手順 | 求める数値 | 計算式 | 主な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1日当たり労務原価 | 年間人件費÷年間稼働可能日数 | 休日、有給休暇、教育、健康診断、社内業務を除き、工事へ充てられる日数を使う |
| 2 | 1人工当たり必要原価 | 1日当たり労務原価+1日当たり間接経費 | 特定案件へ直接計上する費用を重複して加えない |
| 3 | 見積用人工単価 | 必要原価÷(1-目標利益率) | 利益率が売上高基準か、原価への上乗せ率かを区別する |
各段階の数値と計算日を残すと、単価が変動した理由を説明しやすくなります。売上高に対する利益率を使う場合は、必要原価へ単純に同率を上乗せする計算と結果が異なる点にも注意してください。
電気工事の1人工単価を計算する具体例
年間人件費550万円、年間稼働可能日数220日、1日当たり間接経費7,000円、目標利益率20%という仮定で見積用人工単価を計算します。この例は計算方法を説明するものであり、電気工事の相場や標準単価を示すものではありません。
| 項目 | 設定・計算 | 結果 | 前提・確認点 |
|---|---|---|---|
| 前提条件 | 年間人件費550万円、稼働可能日数220日、1日当たり間接経費7,000円、目標利益率20% | ― | 給与・賞与・会社負担保険料を含む。利益率は売上高基準 |
| 労務原価 | 5,500,000円÷220日 | 25,000円/日 | 工事へ充てられる日数で割る |
| 必要原価 | 25,000円/日+7,000円/日 | 32,000円/人工 | 材料費など別計上分は含めない |
| 見積用人工単価 | 32,000円/人工÷(1-0.20) | 40,000円/人工 | 仮定条件に基づく試算値 |
40,000円は上記の仮定から求めた試算値であり、相場や標準単価ではありません。公共工事設計労務単価、地域の取引状況、現行単価、過去案件の粗利益と照合し、差が大きい場合は費用範囲や稼働日数を再確認します。
決めた人工単価を見積金額へ反映する方法
見積用人工単価を決めたら、工事に必要な人工数を算出し、労務費へ反映します。単価だけでなく、作業範囲、人数、日数、追加条件を明示すると、発注者と施工者の認識差を減らせます。
| 見積項目 | 計算・条件 | 金額・記載内容 |
|---|---|---|
| 基本の労務費 | 40,000円/人工×6人工 | 240,000円 |
| 追加条件 | 夜間・休日、高所、遠方移動、停電待ち、緊急対応など | 基本単価に含めない場合は別項目または条件付き単価で記載 |
| 見積条件 | 作業範囲、人工数、材料・工具・交通費の包含関係、除外作業、消費税の扱い | 税込・税抜と適用条件を明記 |
見積書を作成した後は、人工数・単価・追加条件が積算根拠と一致しているかを確認し、発注者へ説明できる状態にします。
見積書の基本項目、費目別内訳、数量・単位・単価・金額の記入方法は、「電気工事見積書の書き方|内訳項目・記入例・注意点」で確認できます。
人工単価を決めるときに起こりやすい失敗
人工単価の不足や過大計上は、費用範囲と計算条件が共有されていないと起こりやすくなります。算出表に使用した数値、資料名、適用時点を残し、担当者以外でも確認できる状態にします。
他社単価や過去単価をそのまま使用する
他社と自社では給与水準、間接費、利益目標、取引条件が異なります。過去の自社単価も、賃金や保険料、燃料費が変われば現状に合わなくなります。比較資料として利用し、自社の最新原価による計算を省略しないことが重要です。
給与だけを人件費として間接費を含めない
基本給だけを年間人件費として扱うと、賞与、手当、会社負担の保険料が不足します。さらに、工具、車両、事務所、管理業務などの間接費を見落とすと、施工するほど共通費用を回収できなくなります。
移動・準備・書類作成・非稼働日を考慮しない
現場で手を動かす時間だけで原価を考えると、移動、打ち合わせ、準備、片付け、写真整理、報告書作成などの時間が漏れます。休日や教育日を含む年間所定日数をそのまま分母にせず、工事へ充てられる日数を現実的に設定します。
原価と諸経費を二重計上する
車両費や現場管理費などを人工単価へ含めたうえで、見積書の諸経費にも全額計上すると二重計上になります。人工単価に含む範囲と別項目にする範囲を費目ごとに定め、案件ごとに同じ基準で運用します。
電気工事の1人工単価を見直す時期
人工単価は一度決めて終わりではありません。計算条件や受注実績が変わったときに見直し、少なくとも年1回は算出根拠を更新します。
- 人件費:賃金、賞与、手当、会社負担の社会保険料・労働保険料が変わったとき。
- 稼働条件:施工可能日数、教育日、社内業務、移動・待機などの配分が変わったとき。
- 間接費・利益:工具、車両、燃料、事務所、管理業務などの費用や利益目標が変わったとき。
- 受注実績:想定人工数と実績がずれる、設定した利益が残らない、または失注が続くとき。
見直した日、参照した公表資料の適用年月、承認者、次回見直し予定を記録してください。
人工単価試算ツールで自社単価の目安を確認する
人工単価試算ツールを使うと、労務原価、必要原価、見積用人工単価を同じ条件で計算できます。結果は単価を確定するものではなく、相場、過去実績、施工条件、所属組織の基準と照合するための参考値として利用します。
年間人件費・稼働可能日数・間接経費・利益率を入力する
ツールには、年間人件費、年間稼働可能日数、1日当たり間接経費、目標利益率を入力します。現行人工単価は任意で入力できます。個人名、給与明細、顧客情報などは入力せず、集計済みの金額だけを使用します。入力値と試算結果はブラウザ内で一時処理され、保存・サーバー送信・アクセス解析への送信は行われず、再読み込みすると消去されます。入力値や試算結果を含まない定義済み利用イベントだけを送信することがあります。
労務原価・必要原価・見積用人工単価と現行単価との差を確認する
試算後は、1日当たり労務原価、1人工当たり必要原価、見積用人工単価、現行単価との差額・差率を確認できます。差が大きい場合は、費用の重複や不足、稼働日数、利益率の入力条件を見直し、責任者が最終判断します。
人工単価を設定・運用するときの注意点
人工単価の計算結果だけで、法令適合性、施工可否、税務・労務上の扱いまで判断することはできません。最新の公的情報と個別の契約条件を確認します。
- 公共工事設計労務単価:本記事は令和8年3月適用分を扱っています。利用時点の最新版、対象都道府県、対象職種、含む費用・含まない費用を確認し、民間工事の請求単価として直接使用しません。
- 法令・資格・税務・労務:電気工事業を営む場合は登録等が必要で、建設業許可を受けていても届出等が必要です。軽微な作業を除く電気工事は資格者が行います。見積書は総額表示義務の対象外ですが、税込・税抜、適用税率、消費税額の扱いを明確にし、保険・時間外労働も最新情報を確認します。
- 情報管理:個人名、給与明細、顧客情報などをツールへ入力せず、集計済みの金額を使用します。所属組織の情報管理ルールにも従います。
- 社内運用:入力条件と算出結果の承認者を定め、担当者だけの判断で単価を確定しない運用にします。
これらの条件を確認したうえで、社内の承認手順に沿って単価を確定します。
電気工事の1人工単価は根拠を残して定期的に見直そう
電気工事の1人工単価は、相場だけで決めず、年間人件費、稼働可能日数、間接費、必要な利益を順に反映して算出します。公共工事設計労務単価、実際の労務原価、見積用人工単価の目的を分け、案件ごとの資格、時間帯、施工環境、移動などの条件も確認してください。
算出に使用した数値、資料、適用年月、承認者を記録し、原価や受注実績が変わったときに再計算できる運用を整えましょう。人工単価試算ツールで基準単価を確認した後は、必要人工数と追加条件を整理し、見積書へ反映します。
ご利用にあたって
本記事は、電気工事の人工単価を検討するための一般的な情報を提供するものであり、特定の相場、利益、法令適合性、税務・労務上の取扱いを保証するものではありません。公表単価、最低賃金、保険料率、法令は変更される可能性があります。実際の単価設定や見積作成では、最新の公的情報、契約条件、所属組織の基準を確認し、必要に応じて行政機関や税理士、社会保険労務士などへ相談してください。
参考情報
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」「公共事業労務費調査・公共工事設計労務単価について」
経済産業省「電気工事の安全」「電気工事業法の申請・届出等の手引き」
国税庁「総額表示の義務付け」「適格請求書等の記載事項」
個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
課題の解決を進める
年間人件費や稼働日数を整理できたら、人工単価試算ツールで自社の基準単価を確認できます。新しい人工単価の設定、現行単価の見直し、見積作成前の原価・利益確認に利用できます。
- 入力項目:年間人件費、年間稼働可能日数、1日当たり間接経費、目標利益率、現行人工単価(任意)
- 得られる結果:1日当たり労務原価、1人工当たり必要原価、見積用人工単価、現行単価との差額・差率
- 利用場面:新規単価の設定、定期見直し、見積作成前の原価・利益確認
入力項目、保存・送信仕様、利用上の注意を確認してから使う場合は、人工単価試算ツールの案内ページをご覧ください。
