電圧降下は、電線やケーブルに電流が流れることで、電源側より負荷側の電圧が低くなる現象です。配線距離が長い、電流が大きい、電線が細いといった条件では電圧降下が大きくなり、照明の明るさ低下やモーターの動作不良などにつながることがあります。
電圧降下を正しく計算するには、単相2線式・単相3線式・三相3線式などの配線方式に合った式を選び、電流、配線長、抵抗、リアクタンス、力率などの条件をそろえることが重要です。本記事では、配線方式別の計算式、100V・200Vの具体例、電圧降下率や許容範囲の確認方法まで順番に解説します。
電圧降下の計算式を配線方式別に一覧で確認

電圧降下の基本式は、配線方式によって係数が異なります。交流回路では電線の抵抗だけでなく、リアクタンスや力率も電圧降下に影響するため、実務では使用するケーブルの電気定数や負荷条件を確認して計算します。
基本式は「Vd=K×I×L×(R×cosθ+X×sinθ)」です。Vdは電圧降下[V]、Kは配線方式による係数、Iは負荷電流[A]、Lは片道の線路長[km]、Rは交流導体実効抵抗[Ω/km]、Xはリアクタンス[Ω/km]、cosθは力率を表します。
代表的な係数は、直流または単相2線式が2、単相3線式の中性線-外線間が1、単相3線式の外線間が2、三相3線式の線間が√3です。まずは、計算対象となる回路の配線方式と、どの電圧を確認したいのかを明確にしましょう。
直流2線式・単相2線式の計算式
直流2線式や単相2線式では、電源から負荷まで電流が流れ、戻り側の電線にも同じ電流が流れます。そのため、片道の線路長をLとする基本式では係数2を使用します。
計算式は「Vd=2×I×L×(R×cosθ+X×sinθ)」です。直流回路ではリアクタンスや力率を考慮しないため、条件に応じて「Vd=2×I×L×R」の形で計算できます。
たとえば、単相100Vのコンセント回路や照明回路などでは単相2線式が用いられることがあります。配線長を往復距離で入力する式もあるため、参照する資料でLが片道を指すのか、往復を指すのかを必ず確認してください。
単相3線式の計算式
単相3線式では、中性線と外線の間の100V側を確認する場合と、2本の外線間の200V側を確認する場合で係数が異なります。100V側の中性線-外線間では係数1、200V側の外線間では係数2を用いるのが基本です。
100V側は「Vd=I×L×(R×cosθ+X×sinθ)」、200V側の外線間は「Vd=2×I×L×(R×cosθ+X×sinθ)」で求めます。
ただし、100V負荷が左右で大きく不平衡になっている場合は、中性線電流や各線の電圧降下を個別に検討する必要があります。単相3線式だから常に係数1になるわけではなく、どの線間電圧を求めるかを確認することが重要です。
三相3線式の計算式
三相3線式の線間電圧に対する電圧降下は、「Vd=√3×I×L×(R×cosθ+X×sinθ)」で計算します。三相回路では、単相2線式とは異なり係数に√3を使用します。
工場設備や業務用機器、モーターなどで三相200Vを使用する場合は、この式を使うケースが一般的です。電線の抵抗Rだけでなく、リアクタンスXと負荷の力率を考慮することで、より実際の条件に近い電圧降下を求められます。
なお、負荷が著しく不平衡な場合や高調波の影響が大きい場合などは、簡略式だけでは十分に評価できないことがあります。設備条件に応じて個別に検討してください。
簡略式と厳密式を使い分ける
電圧降下の計算方法には、概算に適した簡略式と、交流回路をより正確に計算する厳密式があります。目的や設計段階に応じて使い分けることが大切です。
| 計算方法 | 主な式 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| 簡略式(導体抵抗を使用) | Vd≒K×I×L×R | リアクタンスを無視して計算する方法。電圧降下の比較や概算に適している |
| 簡略式(抵抗率を使用) | Vd≒K×ρ×L×I÷A | 導体断面積から抵抗を概算する方法。抵抗率ρと断面積Aを使って求める |
| 厳密式 | 交流導体実効抵抗R、リアクタンスX、力率cosθなどを使用 | 交流回路の電圧降下をより正確に求める方法。実際の設備設計や電線選定に適している |
厳密に計算する場合は、ケーブルメーカーの資料に掲載されているケーブル種類やサイズ、布設条件ごとの抵抗・リアクタンスを確認し、対象製品に合った値を使用します。簡略式は比較や概算には便利ですが、最終的な電線選定や設備設計では、適用する基準、メーカー資料、負荷条件を確認したうえで判断しましょう。
電圧降下を計算する前に確認する項目
電圧降下の計算では、式そのものよりも入力条件の取り違えによる誤差に注意が必要です。配線方式、電流、配線長、電線サイズ、抵抗値などを先に整理し、単位をそろえてから計算しましょう。
ここでは、電圧降下を計算する前に確認しておきたい項目を紹介します。
電流値(A)を確認する
電圧降下は電流に比例して大きくなるため、対象回路に流れる負荷電流を正しく設定する必要があります。電流値は、次の方法で確認できます。
機器の銘板にある定格電流を確認する
単相は「I=P÷(V×cosθ)」で概算する
三相は「I=P÷(√3×V×cosθ)」で概算する
モーターでは効率の影響も考慮する
実際の設備では、始動電流や同時使用率、将来の負荷増設なども考慮が必要です。設計条件が決まっている場合は、その条件に基づく電流値を使用しましょう。
配線長(m)は片道・往復の扱いを確認する

配線長は、電圧降下の計算で間違いやすい項目です。本記事で紹介している基本式では、Lに電源から負荷までの片道の線路長を使用し、単相2線式では係数2によって往復分を考慮します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 片道長を使う場合 | 電源から負荷まで25mなら、L=25mとして計算する |
| 単位を換算する場合 | RをΩ/kmで使用する場合、25mは0.025kmに換算する |
| 往復長を使う場合 | 計算式やツールによっては、25mの配線を50mとして入力する |
| 注意点 | 式ですでに往復分を考慮している場合に50mを入力すると、電圧降下を二重に計上してしまう |
配線長の扱いは、使用する計算式やツールによって異なります。計算前に「配線長」が片道を指すのか往復を指すのかを確認してから入力しましょう。
電線の導体断面積(mm²)・サイズを確認する
電線の導体断面積が大きいほど抵抗は小さくなり、一般に電圧降下も小さくなります。電線サイズは2sq、3.5sq、5.5sq、14sqなどと表記され、sqは実務上、導体断面積mm²を示す表現として使われます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 導体断面積 | 断面積が大きいほど抵抗が小さくなり、電圧降下も抑えやすい |
| サイズ表記 | 2sq、3.5sq、5.5sq、14sqなどで表記される |
| 抵抗との関係 | 「R=ρ×L÷A」から、断面積Aが大きいほど抵抗Rは小さくなる |
| 実際の交流抵抗 | 導体温度や構造、周波数などの影響を受ける |
計算では、使用する電線・ケーブルの種類とサイズを確認することが重要です。より正確に求める場合は、メーカーが公開している対象製品の電気定数を使用しましょう。
銅線・アルミ線など導体の抵抗率を確認する
導体の材質によって抵抗率が異なるため、同じ長さ・断面積でも電圧降下は変わります。一般的な銅導体の概算では、導電率97%の標準軟銅として17.8Ω・mm²/km程度の値を用いる計算例があります。
ただし、抵抗率から求めた値は概算です。実際の導体抵抗は温度によって変化し、交流では表皮効果なども影響するため、ケーブルメーカーが示す交流導体実効抵抗と一致しない場合があります。
アルミ導体や特殊な導体を使用する場合も、銅線の抵抗率をそのまま使用せず、対象となる導体の仕様を確認してください。
交流回路では力率やリアクタンスも確認する
交流回路では、抵抗RだけでなくリアクタンスXと力率cosθが電圧降下に影響します。基本式では「R×cosθ+X×sinθ」の部分が回路の条件を反映します。
力率が低い負荷では、同じ有効電力を使用する場合でも流れる電流が大きくなりやすく、結果として電圧降下が増えることがあります。モーターや変圧器などの負荷では、メーカー資料や設計条件から力率を確認しましょう。
リアクタンスは周波数、電線配置、ケーブル構造などによって異なります。厳密に計算する場合は、対象ケーブルの電気定数を使用してください。
電圧降下の計算方法を具体例で解説
計算式を理解したら、実際の数値を代入して計算してみましょう。ここでは計算手順を分かりやすくするため、主に抵抗分を使った簡略例を示します。
実務では、使用するケーブルの交流導体実効抵抗、リアクタンス、力率、温度、布設条件などを確認し、必要に応じて基本式で計算してください。
100V・単相2線式の計算例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 100V、単相2線式、負荷電流15A、片道25m、R=2Ω/km |
| 計算式 | Vd=2×15×0.025×2=1.50V |
| 結果 | 1.50V |
| 電圧降下率 | 1.50%(1.50÷100×100) |
200V・単相2線式の計算例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 200V、単相2線式、負荷電流15A、片道25m、R=2Ω/km |
| 計算式 | Vd=2×15×0.025×2=1.50V |
| 結果 | 1.50V |
| 電圧降下率 | 0.75%(1.50÷200×100) |
200V・単相3線式の計算例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 200V、単相3線式(外線間)、負荷電流15A、片道25m、R=2Ω/km |
| 計算式 | Vd=2×15×0.025×2=1.50V |
| 結果 | 1.50V |
| 電圧降下率 | 0.75%(1.50÷200×100) |
200V・三相3線式の計算例
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 200V、負荷電流40A、片道100m、力率0.85、R=0.626Ω/km、X=0.0955Ω/km |
| 計算式 | Z=0.626×0.85+0.0955×0.526≒0.582Ω/km、Vd=√3×40×0.1×0.582≒4.0V |
| 結果 | 約4.0V |
| 電圧降下率 | 約2.0%(4.0÷200×100) |
電圧降下率の計算方法
電圧降下をVだけで確認すると、100V回路と200V回路など異なる電圧の回路を比較しにくくなります。そこで、基準電圧に対して何%電圧が下がるかを示す「電圧降下率」を使います。
ここでは、電圧降下率の求め方と確認方法を解説します。
電圧降下率(%)は「電圧降下÷使用電圧×100」で求める
電圧降下率は、次の式で求めます。
電圧降下率[%]=電圧降下[V]÷基準電圧[V]×100
たとえば、100V回路で電圧降下が2Vの場合は「2÷100×100=2%」です。200V回路で同じ2Vの電圧降下が生じた場合は「2÷200×100=1%」となります。
計算するときは、分母に使用する基準電圧が線間電圧なのか相電圧なのかを統一してください。特に単相3線式では100V側と200V側があるため、求めた電圧降下がどの電圧に対するものかを明確にする必要があります。
計算結果を電圧降下率に直して判断する
電圧降下率に換算すると、異なる電圧の回路でも影響の大きさを比較しやすくなります。たとえば1.5Vの電圧降下は、100V回路では1.5%、200V回路では0.75%です。
ただし、「何%以下なら必ず問題ない」と一律に判断することはできません。許容される電圧降下は、配線長、受電方式、幹線・分岐回路の区分、機器の仕様、発注者仕様などによって異なります。
計算した電圧降下率は、適用する基準や機器メーカーの許容電圧と照らし合わせて確認しましょう。
電圧降下の許容範囲はどのくらい?
電圧降下の許容範囲は、すべての回路で同じではありません。配線長や受電条件、幹線・分岐回路の区分などによって確認すべき値が異なります。
計算結果を評価するときは、内線規程などの基準に加え、使用する機器の許容電圧や設計条件も合わせて確認することが重要です。
内線規程の許容電圧降下を配線長別に確認する
内線規程に基づく目安では、配線長や受電方式によって許容される電圧降下の考え方が異なります。60m以下と60m超では、次のように整理できます。
| 配線長 | 電気使用場所内の変圧器から供給 | 電気事業者から低圧で受電 |
|---|---|---|
| 60m以下 | 分岐回路2%以下、幹線3%以下 | 分岐回路・幹線とも2%以下 |
| 60m超~120m以下 | 最遠端まで合計5%以下 | 最遠端まで合計4%以下 |
| 120m超~200m以下 | 最遠端まで合計6%以下 | 最遠端まで合計5%以下 |
| 200m超 | 最遠端まで合計7%以下 | 最遠端まで合計6%以下 |
これらは適用条件を伴う目安です。実際の設計や施工に使用する場合は、最新の内線規程や採用している設計基準を確認してください。
機器メーカーが指定する最低電圧・許容範囲も確認する
配線側の電圧降下が基準の範囲内でも、負荷機器が正常に動作するとは限りません。機器によっては入力電圧の許容範囲や最低動作電圧が定められているため、メーカー仕様も確認する必要があります。
特にモーター、インバーター、制御機器、電子機器などは、電圧低下の影響を受けることがあります。また、モーター始動時のように一時的に大きな電流が流れる場合は、定常運転時より大きな電圧降下が生じる可能性があります。
設備設計では、配線の電圧降下率だけでなく、負荷端で必要な電圧を確保できるかという視点で確認しましょう。
電圧降下が大きすぎると機器の性能低下や誤作動につながる
電圧降下が大きいと、照明が暗くなる、モーターが正常に運転できない、制御機器が不安定になるなどの影響が生じる可能性があります。配線で失われる電力も増えるため、エネルギーロスの原因にもなります。
また、端子の緩みや接続部の劣化によって局所的な抵抗が増えている場合は、計算上の電圧降下だけでなく発熱を伴うことがあります。
異常な発熱、変色、焦げたにおい、電圧変動などが確認された場合は、単純に電線を太くするのではなく、設備を安全な状態にして有資格者へ確認を依頼してください。
電圧降下から必要な電線サイズを求める方法
電圧降下の式を変形すると、許容する電圧降下から必要な導体断面積を概算できます。ただし、電圧降下だけで最終的な電線サイズを決定することはできません。
ここでは、必要断面積の考え方と、計算後に確認すべきポイントを解説します。
許容電圧降下から必要断面積を逆算する
抵抗率ρを使った簡略式「Vd≒K×ρ×L×I÷A」をAについて変形すると、必要な導体断面積は次のように求められます。
A≒K×ρ×L×I÷Vd
たとえば単相2線式で、片道30m、電流20A、許容電圧降下2V、銅導体の抵抗率を0.0178Ω・mm²/mとすると、
A≒2×0.0178×30×20÷2
≒10.68mm²
となります。
実際には標準的な電線サイズから条件を満たすものを選び、メーカー資料の抵抗値などを使って再計算します。上記は抵抗分だけを使った概算であり、交流回路ではリアクタンスや温度なども考慮してください。
計算後は許容電流・施工条件も含めて電線サイズを決める
電線サイズは、電圧降下だけで決めるものではありません。最終選定では、次の条件も確認する必要があります。
許容電流や短絡時の保護
遮断器との協調
周囲温度や布設方法
電線の種類や機械的強度
施工性
同じ断面積でも、ケーブルの種類や布設条件によって許容電流は変わります。複数本をまとめて敷設する場合や高温環境では、補正が必要になることもあります。
電圧降下の逆算結果は候補を絞る目安とし、最終的には技術基準やメーカー資料、設計条件を踏まえて電線サイズを決めましょう。
電圧降下を抑える方法

計算した電圧降下が大きい場合は、電線の太さ、配線距離、電流、供給電圧などを見直します。ただし、一つの対策だけでなく、安全性や施工性、コストを含めて総合的に検討することが重要です。
ここでは、電圧降下を抑える代表的な方法を紹介します。
電線を太くする
電線の導体断面積を大きくすると抵抗が小さくなるため、電圧降下を抑えられます。配線距離を変更できない場合や、負荷電流を減らせない場合に検討される代表的な方法です。
たとえば、同じ材質・長さであれば、2sqより5.5sq、5.5sqより14sqのほうが抵抗は小さくなります。
ただし、太い電線は材料費が増え、配管サイズや端子への接続、曲げやすさなど施工条件にも影響します。電圧降下だけでなく、許容電流や施工性も含めてサイズを選定してください。
配線距離を短くする
電圧降下は配線長に比例して増えるため、配線経路を短くすることも有効です。分電盤や制御盤から負荷までのルートを見直し、不要な迂回を減らせれば電圧降下を抑えられます。
設備配置を計画する段階で、電力を多く使用する機器を電源に近い位置へ配置することも対策になります。
既設設備では経路変更が難しい場合もありますが、新設や改修時には電線サイズを大きくする方法だけでなく、配線ルートの最適化も検討しましょう。
電流を小さくする・回路を分ける
電圧降下は電流が大きいほど増えるため、一つの回路に負荷が集中している場合は、回路を分けて電流を分散することで電圧降下を抑えられることがあります。
負荷設備の増設によって当初設計より電流が増えている場合は、既存回路に追加し続けるのではなく、専用回路や別系統を設ける方法も検討します。
ただし、回路変更には保護装置や配電設備全体の検討が必要です。既設設備を変更する場合は、有資格者や設計担当者へ確認してください。
送電電圧を高くする
同じ電力を送る場合、一般に電圧を高くすると必要な電流を小さくできるため、電圧降下や配線損失を抑えやすくなります。
たとえば、単純な比較では同じ電流・配線条件で1.5V降下した場合、100Vでは1.5%、200Vでは0.75%の電圧降下率です。さらに同じ電力を200Vで供給できれば、100Vより電流を小さくできる場合があります。
ただし、使用できる電圧は設備や機器の仕様、法令、受電方式によって決まります。電圧変更を電圧降下対策だけで安易に行わず、設備全体の設計条件を確認しましょう。
電圧降下を自動計算するなら計算ツールを活用
電圧降下は手計算でも求められますが、配線方式や電線サイズを複数パターン比較する場合は、計算ツールを使うと作業を効率化できます。
ラクワークの電圧降下計算ツールでは、単相2線式、単相3線式、三相3線式などの条件を入力し、候補ごとの計算結果を比較できます。手計算の確認や条件変更時の再計算に活用できます。
配線方式・電流・配線長・電線サイズを入力して計算する
計算ツールでは、必要な条件を確認しながら入力します。主な項目は次のとおりです。
配線方式
電圧、電流
配線長
電線サイズ
特に配線長は、片道か往復かを確認して入力しましょう。複数の電線サイズを比較できる場合は、同じ条件で候補を変えると、サイズによる電圧降下の違いを確認できます。
ただし、計算結果だけで設計を決めることはできません。入力条件を確認したうえで、結果は参考値として活用してください。
計算結果を許容範囲と照らし合わせて確認する
ツールで電圧降下Vや電圧降下率%が表示されたら、適用する基準や設計条件と比較します。単に数値が小さいかどうかではなく、配線長、受電条件、幹線・分岐回路の区分、機器の許容電圧などを踏まえて判断します。
また、候補となる電線サイズを変更した場合は、電圧降下だけでなく許容電流や施工条件も確認してください。
計算結果と入力条件を記録しておくと、設計変更や負荷増設時の再計算もしやすくなります。
電圧降下の計算でよくある質問
電圧降下の計算では、配線長の扱いや電線サイズ、100V・200Vの違いなどで迷うことがあります。
ここでは、電圧降下の計算でよくある疑問について解説します。
電圧降下の計算で「2L」を使うのはなぜ?
単相2線式では、電流が電源から負荷へ向かう電線と、負荷から電源へ戻る電線の両方を流れるため、片道長Lに対して往復分の2Lを考えます。
そのため、片道長を入力する式では「2×L」や係数K=2として表します。
ただし、往復距離を最初から入力する計算式では、さらに2倍する必要はありません。式の定義を確認し、往復分を二重に計算しないよう注意してください。
配線長は片道と往復のどちらで入力する?
本記事で紹介している「Vd=K×I×L×(Rcosθ+Xsinθ)」では、Lは電源から負荷までの片道長です。単相2線式であればK=2によって往復分を考慮します。
一方、電線抵抗を「往復の合成抵抗」として先に求めている場合や、ツール側で往復長の入力を求めている場合は扱いが異なります。
計算前に、使用する式やツールのLが「片道長」「往復長」のどちらを指しているかを確認しましょう。
電線サイズが2sq・5.5sq・14sqの場合も同じ式で計算できる?
基本的な計算式は同じですが、電線サイズによって抵抗Rの値が変わります。一般に、導体断面積が大きいほど抵抗は小さくなり、電圧降下も小さくなります。
抵抗率を使う概算では断面積Aに2、5.5、14mm²などを代入できます。ただし、市販ケーブルの交流導体実効抵抗は単純な抵抗率計算だけでは決まらないため、実務ではメーカー資料の電気定数を使用するのが確実です。
電線サイズを比較するときは、同じ配線長・電流・力率などの条件で計算すると違いを把握しやすくなります。
100Vと200Vでは同じ電流ならどちらが電圧降下率を抑えやすい?
同じ電流、配線長、電線抵抗であれば、電圧降下Vは基本的に同じです。しかし、同じ電圧降下Vでも、200Vのほうが基準電圧が高いため電圧降下率は小さくなります。
たとえば1.5Vの電圧降下は、100Vでは1.5%、200Vでは0.75%です。
さらに、同じ電力を供給する場合は、200Vのほうが100Vより電流を小さくできるケースがあります。ただし、単相・三相、力率、機器仕様など条件が異なるため、実際の回路条件で計算してください。
三相200Vの電圧降下はどう計算する?
三相3線式200Vの線間電圧降下は、基本的に「Vd=√3×I×L×(Rcosθ+Xsinθ)」で計算します。Lは片道の線路長です。
たとえば40A、100m、R=0.626Ω/km、X=0.0955Ω/km、力率0.85の場合、電圧降下は約4.0V、200Vに対する電圧降下率は約2.0%です。
実際の計算では、使用するケーブルの種類・サイズ・周波数・布設条件に合ったRとXを使用してください。
電圧降下は配線方式と条件を確認して正しく計算しよう
電圧降下は、配線方式、電流、配線長、電線の抵抗・リアクタンス、力率などによって変わります。まず単相2線式・単相3線式・三相3線式のどれに該当するかを確認し、使用する式の配線長や単位の定義をそろえることが大切です。
計算後は、電圧降下Vだけでなく電圧降下率%も求め、内線規程などの基準や負荷機器の許容電圧と照らし合わせます。電圧降下が大きい場合は、電線サイズ、配線距離、回路分割などの対策を検討しましょう。
なお、電圧降下の計算結果だけで電線サイズや施工可否を決定することはできません。許容電流、保護協調、布設条件、機器仕様なども含めて確認し、安全な設備設計につなげましょう。
SOURCE & FRESHNESS
根拠・参考資料
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計算条件や解説内容の確認に使用した資料です。実際の設計・施工・安全管理・会計処理では、リンク先の最新版、個別条件、所属組織の基準も確認してください。
- 法令・公的資料
経済産業省「電気事業法 告示・内規等」
- 参照内容
- 電気設備の技術基準・解釈の最新版と適用上の前提を確認
- 公開・改定
- 電気設備の技術基準の解釈:2025年11月20日改正
- 資料確認日
- 規格・標準仕様
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」
- 参照内容
- 電線・ケーブル・電線管の仕様、施工条件、参照規格を確認
- 公開・改定
- 2025年5月12日改定
- 資料確認日




