ケーブルを選定するときは、「何sqなら何Aまで流せるか」だけで判断するのではなく、ケーブルの種類や布設方法、周囲温度、複数条をまとめて布設するかといった条件まで確認する必要があります。同じ導体サイズでも使用条件が変われば、確認すべき許容電流も変わるためです。
この記事では、ケーブルの許容電流の基本的な考え方から、基準許容電流の調べ方、補正条件の確認方法、実際の確認手順まで順番に解説します。メーカー資料や規格資料を手元に用意し、自分の使用条件に合った許容電流を確認する際の参考にしてみてください。
ケーブルの許容電流とは
ケーブルの許容電流は、電線やケーブルを適切に使用するために確認する基本的な項目です。ただし、許容電流はケーブルの断面積だけで一律に決まるものではありません。
ここでは、許容電流の意味と、同じサイズでも確認値が変わる理由について解説します。
許容電流はケーブルに流せる電流を検討するための基準

許容電流とは、電線やケーブルに電流を流したときの温度上昇を一定の範囲に抑え、絶縁体などの性能を損なわずに使用するための基準となる電流値です。ケーブルに電流が流れると導体の抵抗によって発熱するため、流す電流が大きくなるほど導体温度も上昇します。
そのため、回路に流れる負荷電流に対して、使用条件を踏まえた許容電流を確認することが重要です。許容電流は「このサイズなら必ず何Aまで使える」という固定値ではなく、ケーブルの仕様と布設条件をそろえたうえで確認します。
同じサイズでもケーブルの種類や使用条件で許容電流は変わる

導体サイズが同じケーブルでも、絶縁材料やケーブル構造、心線数、布設方法、周囲温度などが異なれば、許容電流も同じとは限りません。放熱しやすい条件と熱がこもりやすい条件では、導体温度の上がり方が異なるためです。
たとえば、許容電流表を見る場合も、表に記載されたケーブル種類や布設条件が実際の使用条件と一致しているかを確認する必要があります。サイズだけを見て別条件の数値をそのまま流用せず、表の適用条件まで確認しましょう。
ケーブルの許容電流が変わる主な条件
ケーブルの許容電流を確認するときは、どの条件が値に影響するのかを整理しておくことが大切です。特にケーブルの仕様や放熱条件に関わる項目は、基準値や補正係数を選ぶ際の重要な判断材料になります。
ここでは、許容電流が変わる主な条件について解説します。
ケーブルの種類・導体材質・導体サイズ
IV、CV、CVTなど、使用する電線・ケーブルの種類によって構造や絶縁材料が異なるため、参照する許容電流表も変わります。導体材質や公称断面積も、許容電流を確認するうえで重要な条件です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| ケーブルの種類 | IV、CV、CVTなどの正式な種類 |
| 導体材質 | 銅、アルミニウムなど |
| 導体サイズ | 2sq、5.5sq、14sqなどの公称断面積 |
| 参照資料 | 条件に対応したメーカー資料や規格資料 |
まずは使用するケーブルの種類・導体材質・導体サイズを正確に確認し、それぞれの条件に対応した資料を参照しましょう。似た名称や同じsqであっても、種類や材質が異なるケーブルの許容電流表をそのまま流用しないことが大切です。
心線数・実際に使用する線数
多心ケーブルでは心線数や実際に通電する線数が許容電流の条件に関わる場合があります。ケーブルの外形やサイズだけでなく、何心のケーブルを使用し、そのうち何本に電流が流れるのかまで確認する必要があります。
資料を確認するときは、「3心」「4心」などのケーブル構造と、表が想定している通電条件を照合します。心線数の条件が違う表を流用すると、実際の使用状態と評価条件がずれる可能性があります。
布設方法
ケーブルの許容電流は、空中、ラック、管路など、どのように布設するかによって変わります。布設方法によって周囲への熱の逃げやすさが異なり、ケーブルの温度上昇に影響するためです。
| 布設方法 | 放熱条件の特徴 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 空中 | 周囲へ熱を逃がしやすい | 空中布設に対応した許容電流表か |
| ラック | 配列やケーブル同士の間隔で放熱条件が変わる | 条数・間隔・配列条件が一致しているか |
| 管路 | 管内に熱がこもりやすい | 管路布設の条件や必要な補正が反映されているか |
許容電流表には、対象となる布設方法や配列条件が設定されている場合があります。実際の施工方法と表の条件を照合し、条件が異なる場合は対応する表や補正方法を確認しましょう。
周囲温度
許容電流表には基準となる周囲温度が設定されていることがあります。実際の設置場所の周囲温度が基準条件より高い場合などは、ケーブルの温度が上がりやすくなるため、対応する温度補正を確認する必要があります。
周囲温度補正係数は、ケーブルの絶縁材料や資料ごとの条件によって異なります。一般的な数値を当てはめるのではなく、使用するケーブルに対応した資料から補正係数を確認してください。
多条布設・ケーブルの集合状態

複数のケーブルを近接させたり、まとめて布設したりすると、ケーブル同士の発熱によって熱が逃げにくくなる場合があります。そのため、単独で布設するときと同じ許容電流をそのまま適用できないことがあります。
ケーブルを複数条まとめて布設する場合は、条数や配列、間隔などの条件を整理し、対象となる多条布設の補正条件を確認しましょう。実際の集合状態と資料の条件が一致しているかも重要です。
その他の補正条件
設備や施工条件によっては、周囲温度や多条布設以外の条件も確認が必要です。たとえば、資料側で特定の配列、設置環境、施工条件などが定められている場合は、それらも含めて判断します。
補正条件は「よく使う係数だから」という理由で固定せず、参照資料に記載された適用条件を確認することが重要です。条件が不明な場合は、メーカーや設計担当者などに確認したうえで扱いましょう。
ケーブル条件と補正係数をまとめて整理したい場合は、ラクワークの「許容電流確認ツール」を利用できます。ケーブル条件、基準許容電流、補正係数などを入力し、確認に必要な情報を一か所にまとめられます。
ケーブルの許容電流は基準値と補正条件から確認する
許容電流を確認するときは、最初から補正後の数値を探すのではなく、使用条件に対応する基準許容電流を確認し、必要な補正を反映する流れで整理すると分かりやすくなります。
ここでは、基準許容電流から補正後許容電流を確認する基本的な考え方について解説します。
まず対応する資料から基準許容電流を確認する
最初に、使用するケーブルの種類、導体サイズ、心線数、布設方法などに対応する許容電流表を確認します。その際は数値だけを見るのではなく、表がどの条件を前提としているかまで確認してください。
後から確認できるように、参照した資料名や改訂時点、表番号、掲載ページ、基準となる周囲温度や布設条件なども記録しておくと便利です。資料が改訂された場合にも、どの根拠で判断したのかを追いやすくなります。
基準許容電流に必要な補正を反映する
基準許容電流を確認したら、実際の使用条件に応じて必要な補正を反映します。主な補正項目は、次のように整理できます。
| 補正項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 周囲温度補正 | 基準温度と実際の周囲温度との差を確認する |
| 多条布設補正 | 複数のケーブルを近接して布設する場合の影響を確認する |
| その他の補正 | 布設方法や使用条件に応じて必要な補正を確認する |
補正後許容電流は「基準許容電流 × 各補正係数」で求めます。ただし、適用する補正の種類や係数は案件ごとに異なるため、メーカー資料や規格資料に記載された条件を確認して設定しましょう。
補正後許容電流と負荷電流を比較する
必要な補正を反映した後は、補正後許容電流と回路の負荷電流を比較します。負荷電流が補正後許容電流に対してどの程度の位置にあるかを確認することで、候補となるケーブルを検討する材料になります。
ただし、許容電流の比較だけでケーブルサイズや施工可否を確定できるわけではありません。電圧降下、短絡時の条件、保護装置との協調、設備ごとの規程など、ほかの設計条件も含めて最終判断してください。
ケーブルの許容電流を確認する手順
許容電流の確認では、必要な条件を先に整理し、根拠資料と照合しながら進めることが重要です。数値だけを先に探すと、異なる条件の表や補正係数を使ってしまう可能性があります。
ここでは、ケーブルの許容電流を確認する基本的な手順を5つに分けて解説します。
1. 使用するケーブルの条件を整理する
まず、使用するケーブルと回路の条件を整理します。許容電流表を選ぶため、次の項目を確認しておきましょう。
ケーブルの種類・導体材質・導体サイズ
心線数・布設方法・周囲温度・条数
回路用途・負荷電流
条件が曖昧なままだと、参照すべき許容電流表を判断しにくくなります。図面や仕様書、施工条件を確認し、不明な項目を明確にしておくことが大切です。
2. メーカー資料や規格資料から基準値を確認する
次に、整理した条件に対応するメーカー資料や規格資料を確認します。許容電流表では、次の適用条件まで照合してください。
ケーブルの種類・サイズ
布設方法・周囲温度
心線数などの適用条件
使用した資料名や改訂年月、表番号・ページ、基準許容電流も記録しておくと、後から計算根拠を確認しやすくなります。
3. 資料の適用条件と実際の使用条件を照合する
基準値を見つけたら、その表が実際の使用条件に適用できるかを確認します。たとえば、空中布設を前提とした値を管路布設にそのまま使うなど、条件が異なる表から数値だけを引用するのは避けましょう。
資料の適用条件と施工条件が一致していない場合は、別の許容電流表を探すか、資料で指定された補正方法を確認します。
4. 必要な補正係数を確認する
実際の条件と基準条件に違いがある場合は、周囲温度や多条布設など、必要な補正係数を確認します。補正係数は、適用する理由と参照元を一緒に記録しておくことが大切です。
また、「係数が分からないから1として計算する」のは避けましょう。補正が不要であることを確認した結果として1になる場合と、未確認の状態では意味が異なります。
5. 補正後許容電流と負荷電流の差を確認する
必要な値がそろったら、基準許容電流に補正係数を反映し、補正後許容電流を求めます。その後、負荷電流と比較し、どの程度の差があるかを確認します。
計算結果だけを残すのではなく、使用したケーブル条件、参照資料、基準許容電流、補正係数とその根拠も一緒に残しておくと、設計変更や再確認の際に内容を追いやすくなります。
ケーブルの許容電流を確認するときによくあるミス
許容電流の確認では、計算そのものよりも、参照条件や補正条件の取り違えが問題になることがあります。特に、一覧表の数値だけを見て判断すると、実際の施工条件とのずれに気づきにくくなります。
ここでは、ケーブルの許容電流を確認するときによくあるミスについて解説します。
ケーブルサイズだけで許容電流を判断する
「38sqなら何A」といったように導体サイズだけで許容電流を判断すると、ケーブル種類や布設条件の違いを見落とす可能性があります。同じ断面積でも、使用条件が異なれば参照する許容電流が変わる場合があります。
まずケーブルの種類と施工条件を確認し、その条件に対応した表を選ぶことが基本です。
異なる条件の許容電流表をそのまま使う
Web上やカタログで許容電流表を見つけても、表の条件が実際の施工方法と一致しているとは限りません。対象ケーブル、周囲温度、布設方法、条数などを確認せず、数値だけを引用しないようにしましょう。
許容電流表を使用するときは、表題や注記、適用条件まで確認することが重要です。
補正係数の根拠を残さない
補正後許容電流の結果だけを記録していると、後から見たときに「なぜこの係数を使ったのか」が分からなくなることがあります。条件変更や設計レビューが発生した場合、根拠を再調査する手間も増えます。
補正係数を使用するときは、資料名や表番号、対象となる条件などを一緒に記録しておきましょう。
未確認の補正係数を1として計算する
補正係数をまだ確認していないにもかかわらず、とりあえず1を入力して計算すると、補正不要であることを確認済みの状態と区別できなくなります。その結果、確認漏れに気づかないまま計算結果だけが残る可能性があります。
不明な係数は未確認として扱い、資料で適用条件を確認してから計算へ反映することが大切です。
許容電流確認ツールでケーブル条件・根拠・補正結果を整理できる
ケーブルの許容電流を確認するときは、ケーブル条件、基準許容電流、補正係数、負荷電流など複数の情報を整理する必要があります。手作業で管理すると、どの資料の値を使ったのか分かりにくくなることもあります。
ラクワークの「許容電流確認ツール」では、これらの情報をまとめながら補正後許容電流を確認できます。
ケーブル条件と参照資料をまとめて入力できる
ツールでは、計算に必要な条件と参照資料の情報をまとめて整理できます。入力できる主な項目は次のとおりです。
ケーブルの種類・導体サイズ・心線数
布設方法
参照した資料名・表番号
基準許容電流
計算結果とあわせて数値の根拠も残せるため、後から確認する際も条件と参照元を追いやすくなります。
補正後許容電流と負荷電流との差を確認できる
基準許容電流と、確認した周囲温度補正係数、多条布設補正係数などを入力すると、補正後許容電流を計算できます。負荷電流も入力すれば、補正後許容電流との差を同じ画面で確認できます。
複数の情報を別々に管理するよりも、条件と計算結果をまとめて確認しやすくなる点がメリットです。
不足している条件や根拠を確認しやすい
ツールでは、必要な条件がそろっているかを確認しながら入力できます。補正係数が未確認の場合に、自動で1として扱って計算を進めるのではなく、不足している情報を確認できるため、確認漏れを防ぐ補助として利用できます。
ただし、ツールはケーブルサイズや施工可否、法令・規程への適合を自動判定するものではありません。メーカー資料や規格資料などで条件を確認し、設計・施工の最終判断は専門担当者が行ってください。
使用するケーブル条件と参照資料が手元にある場合は、許容電流確認ツールで補正後許容電流と負荷電流との差を整理できます。
ケーブルの許容電流に関するよくある質問
ケーブルの許容電流を確認するときは、サイズや補正方法について疑問を持つことがあります。ここでは、許容電流に関するよくある質問について解説します。
ケーブルの許容電流はサイズだけで決まりますか?
いいえ。導体サイズは重要な条件の一つですが、それだけで許容電流が決まるわけではありません。ケーブルの種類、絶縁材料、心線数、布設方法、周囲温度、多条布設などによって確認条件が変わります。
許容電流を確認するときは、サイズだけでなく実際の使用条件に対応する資料を確認してください。
許容電流の補正はどのように計算しますか?
基本的には、使用条件に対応する基準許容電流へ、必要な補正係数を反映して補正後許容電流を確認します。周囲温度、多条布設など複数の補正が必要な場合は、それぞれの係数を基準許容電流に反映します。
ただし、適用する補正係数や計算条件はケーブルや資料によって異なるため、使用するメーカー資料や規格資料を確認してください。
周囲温度が高い場合は許容電流に影響しますか?
影響する場合があります。周囲温度が高くなるとケーブルから熱を逃がしにくくなるため、基準条件より高い温度で使用する場合は温度補正が必要になることがあります。
どの温度から補正が必要になるか、どの係数を使用するかは対象ケーブルの資料で確認しましょう。
複数のケーブルをまとめて布設する場合も同じ許容電流を使えますか?
ケーブルをまとめて布設すると、相互の発熱によって放熱条件が変わるため、単独布設と同じ条件を適用できない場合があります。条数、配列、間隔などに応じた補正条件が設定されていることがあります。
実際の集合状態を整理し、参照する資料で多条布設に関する条件を確認してください。
メーカーごとに許容電流の値が違う場合はどう確認しますか?
まず、比較している表のケーブル仕様や布設方法、周囲温度、心線数などの条件が同じかを確認します。前提条件が異なれば、許容電流の数値も単純には比較できません。
実際に採用するケーブルが決まっている場合は、その製品に対応する最新のメーカー資料を優先して確認し、必要に応じて関連する規格や設計基準とも照合しましょう。
ケーブルの許容電流は使用条件と根拠資料をそろえて確認しよう
ケーブルの許容電流は、導体サイズだけで判断するのではなく、ケーブルの種類、心線数、布設方法、周囲温度、多条布設などの条件をそろえて確認することが重要です。まず対象ケーブルに対応する資料から基準許容電流を確認し、実際の施工条件との違いに応じて必要な補正を反映します。
また、計算結果だけでなく、参照した資料や補正係数の根拠を残しておけば、設計変更や再確認にも対応しやすくなります。条件や根拠をまとめながら確認したい場合は、許容電流確認ツールも活用し、使用条件に合った値を整理して確認しましょう。
SOURCE & FRESHNESS
根拠・参考資料
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計算条件や解説内容の確認に使用した資料です。実際の設計・施工・安全管理・会計処理では、リンク先の最新版、個別条件、所属組織の基準も確認してください。
- 法令・公的資料
経済産業省「電気事業法 告示・内規等」
- 参照内容
- 電気設備の技術基準・解釈の最新版と適用上の前提を確認
- 公開・改定
- 電気設備の技術基準の解釈:2025年11月20日改正
- 資料確認日
- 規格・標準仕様
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」
- 参照内容
- 電線・ケーブル・電線管の仕様、施工条件、参照規格を確認
- 公開・改定
- 2025年5月12日改定
- 資料確認日
- メーカー資料
SWCC株式会社「技術情報」
- 参照内容
- 電線・ケーブルの構造、仕上外径、許容電流など製品別条件の確認先として参照
- 資料確認日




